露地栽培野菜の衰退


                    季節外れの秋のズッキーニ

今年の秋の高温化を見越して初夏の定番野菜であるズッキーニを植えてみました。

このまま地球温暖化が進むと日本の四季の野菜の構図が変わっていくかもしれません。

                       露地栽培の衰退
最近、野菜を食べて味や香りを感じなくなったことに気がついた方はおられない でしょうか?
キャベツなのか白菜なのか分からない? 葉野菜や葱を食べても紙を食べているような食感の悪さを感じる。
ピーマンが苦く元々苦いものだと思っている。
胡瓜やトマトを食べても鼻に抜けるような香りが無い。

   野菜は健康のためと思って半ば義務的に食べている。 そんなことを感じている方も多いのでは無いでしょうか。
その主な理由は量産を目指した過度な肥料栽培と温室栽培が多くなったからです。
実は有機・無機を問わず肥料栽培やハウス栽培全盛の時代のアンチテーゼとしてうまれてきたのが肥料を使わない自然栽培と言う
農法なのです。それは当然に露地栽培と言うことになります。               


                            晩秋の5・6番の畑
          多種多様な野菜が育っています。冬の訪れが間近に迫る晩秋の畑の風景。
          厳冬期は野菜が発芽しないためこの時季3月収穫までの野菜を一斉に種を蒔き、定植をします。
          農園主はこの季節が一番好きです。どこか張り詰めていて生命の息吹を感じるからです

有機無機を問わず肥料を多投された野菜・ハウス栽培野菜は窒素過多となり、成長が 早く完熟しないまま出荷されるためデンプン質の
多い野菜となり、糖分・ビタミンが 少なく、栄養価が乏しい。
急成長すると野菜は倒れないように筋を張り、歯切れの悪い野菜となります。
子供さんが野菜を嫌う一つの大きな要因となっています。いつまでも口に残り飲み 込むタイミングが分からないのです。
特に、ハウス栽培は野菜本来の季節に育てら れていない物も多く、野菜本来の味香りなどの美味しさが乏しくなります。
露地野菜は手が掛かり自然のリスクに晒され、成長が遅く美味しいにも拘わらず、 見てくれの悪さからか、流通や消費者から敬遠される
ために価格も低く評価されず、 露地栽培農家は減少の一途を辿っています。
このようにしてスーパーに並ぶ野菜は季節感が無くなり本来の季節野菜の美味しさ を失いつつあります。
そんな現状を美味しい野菜を届けたいと願う農園主は淋しく感じております。

(美味しい野菜とは何)
消費者が美味しいと感じる野菜を考えて見ましょう。 これをマーケティングではセグメント(要因細分化)と称します。
○野菜の個性である味香りが豊かであること→ 味香りは舌先と鼻で感じます。
○歯切れなどの食感が良いこと→ 肉厚で噛みきれない硬い繊維が無いこと。
○エグミや苦みでは無く旨味があること→ グルタミンなどの旨味の他にミネラル分 が豊富なこと。
○糖分やビタミン類が豊富であること→ 野菜が完熟していること。

肥料栽培やハウス(促成)栽培では野菜の内部がどうなっているかを考えて見ます。
・肥料栽培の野菜は土中に窒素分があれば常に成長し続けると言った性質を持って います。
・肥料栽培ではこの窒素分の調整が難しいのです。成長過程の野菜は内部にデンプン 質を貯め込みます。デンプンは苦いのです。
・急成長した野菜は倒れないように葉肉は薄く茎は筋が多く出てきます。
・成長し続ける野菜は野菜の個性である味香りが出難く、かつ土中にミネラル分が 乏しいと味香りが薄くなります。

それでは、野菜を美味しくするためにはどうすれば良いのでしょうか?
成長過程では土中に窒素分が緩やかに供給され、完熟期に入ったら土中の窒素分を 切ることが必要となります。
なおかつ細胞が正常に育つには土中にバランスの良い ミネラル分があることが重要となります。
(ミネラル分は正常細胞形成には不可欠 ですので野菜本来の味香りが生まれます)
結論から言いますと、高窒素栽培では野菜はいつまでも生長し続けて完熟はしない のです。
美味しい野菜は必ず、低窒素栽培で育った野菜なのです。 草木堆肥及び露地栽培のメカニズムはその条件に合っております。


                           ビーツ
      20年間ビーツを育てています。当初はお客様から食べ方が分からないと言われ随分 と苦労しました。
      ビーツは野菜の血液と言って血管をきれいにします。茎はきんぴら 風に炒めると甘くて美味しい。
      荒く摺り下ろしてポテトサラダにします。ボルシチは 定番ですね。


 (完熟野菜となる仕組みを次の項で詳述いたします)